袋ナット緩み抑制機能を強化「BKジョイントⅡの性能」
- 2021.07.05
- カテゴリ: 製品|Products
|環境変化への対応
一般配管の定義とは、例えば、一般配管用ステンレス鋼鋼管(JIS G 3448)の場合、建築設備向の給水、給湯、空調(冷水・温水・冷温水)および、それらに準じた、その他の配管用として規格化されています。
しかしながら、時代の変化によって、一般建物や設備に求められる環境も変わり、結果的に、一般配管に対する環境条件も変わってきました。
例えば、給湯配管では、自然冷媒ヒートポンプ給湯機(エコキュート等)の様な熱源機器類の性能向上から、供給温度を高く設定できるようになってきました。
それらの配管環境の変化から、10年前では問題のなかった配管に、何らかの問題を発生させてしまうという事案も出てきました。
例えば、拡管式継手の「BKジョイントⅡ」は「BKジョイント」を改良し、2018年5月に発売されました。
最大の改良のポイントは、「袋ナットの緩み抑制機能」となります。
|袋ナットの緩み抑制機能
「BKジョイントⅡ」は、継手本体(おねじ)と袋ナット(めねじ)の2つの部材で構成されています。
袋ナットをセットするパイプの端部は専用工具で帯状に拡管(膨らませる)させます。
継手本体と袋ナットの間にパイプ拡管部を挟み込む形で、継手本体と袋ナットをねじ接続することで施工が完了となります。
ここでの注意点は、継手本体(おねじ)と袋ナット(めねじ)は取り外しを想定しているため、それぞれ平行ねじであるということです。
実装の配管には何かしらの理由で少なからず振動が掛かります。
配管の振動は、平行ねじ接続である継手本体と袋ナットの緩みを誘発する可能性があります。
そのために袋ナットは、その内部で継手本体の先端部とメタルタッチさせる必要があります。
このメタルタッチは継手内部で起こる事象となります。
そのため継手本体と袋ナットのねじ接続完了時に、外観で確認するために、継手本体にセットしている「確認リング」が見えなくなっていることを施工基準としていただいております。
しかしながら、前型である「BKジョイント」において、竣工後に袋ナットが継手本体から脱落するという不具合事例が数例報告されております。
ベンカンではこの原因を、配管に過度な振動が掛かった結果ではないかと考えております。
そこで、「BKジョイントⅡ」では、継手内部のメタルタッチに加え、追加の機能を設けることで、緩み抑制機能を強化しております。
現型の「BKジョイントⅡ」も前型の「BKジョイント」と同様に継手内部のメタルタッチで袋ナットの緩みを防ぐ構造であることには変わりがありません。
今回、新たに追加した機能は、袋ナット内部に「返し」を設けたことで、袋ナットが緩み方向に回転しようとした場合に、その「返し」が「確認リング」に噛みつきます。
この噛みつきにより、万が一、継手内部でメタルタッチしていない場合でも、一定の緩み抑制機能を発揮させるものです。
|性能確認試験
ベンカンでは、竣工後に配管にかかる過度な振動の原因を、「ウォーターハンマ」と機器類による「微振動」ではないかと仮定しております。
そこで、BKジョイントⅡの緩み抑制機能を証明すべく、「ウォーターハンマ」と「微振動」を想定した性能確認試験を実施しております。
1.対ウォーターハンマ性能確認試験
試験内容:右図の配管に対し振幅をかけ袋ナット緩み進行の有無を確認します。
配管は以下の2種類で実施します。
(1) 袋ナットが本締めされたもの(継手内部でメタルタッチしているもの)
(2) 袋ナット本締めから45°緩めたもの(継手内部でメタルタッチしていないもの)
・振幅条件は以下とします。
・振幅幅は100㎜とします。
・振幅の回数は10,000回とします。
・振幅のピッチは10秒/回とします。
試験結果
①袋ナットの緩みは確認されませんでした。
②継手によって緩みの進行は見られましたが、袋ナットの脱管には至りませんでした。
結果考察
継手内部でメタルタッチができている配管では緩みは発生しません。
継手内部でメタルタッチをしていない場合でも、緩みは進行しますが脱管には至りません。緩みの進行は、袋ナットの『返し』が確認リングに噛みこむまでの遊び角度であると判断しております。
2.対微振動性能確認試験
試験内容:テストピースに微振動を掛け、袋ナット脱管の有無を確認します。
テストピースはソケットの両側に単管を接続したものとし、その条件は以下とします。
(1) 袋ナットが本締めされたもの(継手内部でメタルタッチしているもの)
(2) 袋ナット本締めから45°緩めたもの(継手内部でメタルタッチしていないもの)
振幅条件は以下とします。
①振幅の幅は0.3㎜とします。
②振幅の回数は200万回とします。
③振幅の周波数は200Hzとします。
試験結果:(1)、(2)とも袋ナットは脱管しませんでした。
結果考察:BKジョイントⅡでは、微振動に対して一定の耐性があると判断しております。
以上のことから「ウォーターハンマ」と「微振動」を想定した性能試験による検証から、「BKジョイントⅡ」では、袋ナットの「返し」が振動に対する一定の耐性があることが分かります。
ただし、「BKジョイントⅡ」の本来の対緩み性能は、あくまでも継手内部のメタルタッチによりもたらされるものです。
つまり、袋ナットの「返し」は補助機能であることをご理解いただく必要があります。
|施工基準の徹底
尚、「BKジョイントⅡ」を間違いなく本締め(継手内部でメタルタッチさせる)を行うために、ベンカンでは以下の施工基準を設けております。
1.既定のパイプレンチを使用して本締めを行うこと。
30Suまでは呼び寸法が450mm以上、60Suまでは呼び寸法が600mm以上を使用してください。
2.袋ナットを継手本体に最後までしっかりと締め切ること。
3.本締め後、継手を正⾯から⾒て確認リングが⾒えなくなったことを確認すること。
また、施工基準を徹底していただき、継手の持ち得た性能を発揮させるためにも、ベンカンでは、施工前に必ず施工講習会を実施させていただくことをお願いしております。
決して、現場単位での開催ではなく、新たな作業者が入場される際には、何度でも追加で施工講習会を実施させていただきます。
施工講習会のご依頼は、最寄りの営業所までご依頼ください。
Toshinori Tanaka