迷走電流腐食
- 2017.09.21
- カテゴリ: 知識|Knowledge
|錆びにくいステンレス鋼
ステンレス鋼の最大の特徴は、「錆びにくい」金属であるということだと思います。
その原理は、ステンレス鋼の中に含まれたクロム(Cr)が大気中の酸素(O)と結合することで「不動態皮膜」と呼ばれる薄い保護皮膜を形成するためです。
この保護皮膜である「不動態皮膜」が錆びの進行を防ぐ役割を果たしています。
また、この「不動態皮膜」の特徴は、破壊された場合に「自己修復機能」を有している点にあります。
仮に加工中や使用中に不動態皮膜が破壊されてしまった場合でもメッキや塗装と異なり、鋼中のクロム(Cr)と大気中の酸素が結合し、「瞬時に再生」いたします。
また、「自己修復機能」は大気中の酸素により、無限に繰り返されます。
そのため、ステンレス鋼は半永久的に錆びない仕組みを作り出せるのです。
しかしながら、「不動態皮膜」は万能とは言えません。
実際には「錆びない」ではなく「錆びにくい」金属であることを理解して使用しなければなりません。
|迷走電流腐食
錆びにくいステンレス鋼ではありますが、その使用環境などによっては、腐食してしまう場合もあります。
その一つが、「迷走電流腐食(stray current corrosion)」です。
「迷走電流(stray current)」とは、正規の回路以外のところを流れる電流のことであり、一般的には何らかの原因により地中を流れる電流のことを指し、この「迷走電流」に起因する埋設配管の腐食を「迷走電流腐食」といいます。
最も報告の多い事例となるのが直流電流を使用する電車軌道からの迷走電流が起因するの場合です。
直流電気鉄道の電流軌道は、[ 変電所 ] → [ 架線 ] → [ 電気車両 ] → [ レール ] そして、[ 変電所 ]に戻るのが基本です。
ところが、電流軌道から外れた「迷走電流」が、土壌より導通のよい金属構造物に流入し、その電流が土壌中に流出する部分で電気分解することにより「迷走電流腐食」が発生します。
特に、レールと平行して埋設された金属配管は「迷走電流」が流れ込み易いので注意する必要があります。
|迷走電流腐食の防止
「迷走電流腐食」を防止するためには、その根源である「迷走電流」の流入を遮断する必要があります。
そのための施工側の対策としては、外面をポリエチレンや塩化ビニルなどで被覆した金属管を用いたり、防食テープを巻いたりなどの外面被覆処理を施すのが一般的です。
ベンカンでは、処置が合理的で確実な「ポリエチレンスリ-ブ」を管の外側に被せて処置することを推奨しています。
▲迷走電流腐食の防止処置例:防食テープ(画像左)とポリスリーブ(画像右)
なお、防せい防食用語(JIS Z 0103)では、「迷走電流腐食」と「電食」を同義語と記載されていますが、「異種金属接触腐食(ガルバニック腐食)」のことを「電食」と呼んでいる場面もよく見かけます。
話の中で「電食」が出てきたら、「迷走電流腐食」か「異種金属接触腐食(ガルバニック腐食)」なのかをよく確認する必要がありそうですね。
yutaka.yoshida