錆びにくいステンレス鋼の特性
- 2016.11.14
- カテゴリ: 知識|Knowledge
|ステンレス鋼とは
生活の身の回りに普及するステンレス鋼ですが、意外と、その正体をご存知の方は多くありません。
ステンレスから想起されるもっとも多いイメージは、「錆びない」なのかと思います。
ステンレスですが、正式には、ステンレス鋼(stainless steel)と呼びます。
そもそも、ステンレス鋼とは、鉄(Fe)をベースに、クロム(Cr)などを配合して人工的に造った金属です。
その定義は、「炭素含有量 1.2%以下・クロム含有量 10.5%以上の鋼」とされています。(ISO規格より)
例えば、ステンレス鋼製のスプーンやフォークの裏に「18-8」と表記されていますが、これは、18%のクロムと、8%のニッケルが含まれていることを意味します。
このように、ステンレス鋼の定義に則した上で、様々な素材を含有させたり、加工処理を加えることで、様々な特性を持ったステンレスが存在します。
現在は、100以上の種類のステンレス鋼が存在しております。
ステンレス鋼ですが、一般の鋼類と比べると優れた耐食性を持っていますが、その種類の特性や使用環境によっては錆びる可能性も否定できません。
よって、特性を理解して、正しい条件の下でご使用いただくことが重要となります。
|不動態皮膜
ステンレス鋼の定義は、「炭素含有量 1.2%以下・クロム含有量 10.5%以上の鋼」とお伝えしました。
そもそも、ステンレス鋼が「錆びにくい鋼」である要素は、含有するクロムに起因します。
もともと、クロム(Cr)とは、鉄の錆びを予防するためのメッキなどに使用される耐食性の強いものです。
ステンレス鋼の中に含まれたクロム(Cr)は、大気中の酸素(O)と結合することで、表面に「不動態皮膜」を形成します。
「不動態皮膜」は、肉眼で確認できない僅か1~3nm(ナノメートル)程の薄い皮膜なのですが、錆びの進行を防ぐ役割を果たしているという事になります。※1ナノメートル=100万分の1ミリ
また、多くの方々が疑問を抱かれるのが、この「不動態皮膜」が破壊された場合にどうなるのかです。
不動態皮膜の最大の特徴は、「自己修復機能」を有している点にあります。
仮に加工中や使用中に不動態皮膜が破壊されてしまった場合でもメッキや塗装と異なり、鋼中のクロム(Cr)と大気中の酸素が結合し、「瞬時に再生」致します。
この再生に時間がかかれば錆びが進行してしまうため、ここでの「瞬時に再生」は重要な役割です。
また、「自己修復機能」は大気中に酸素がある限り、無限に繰り返されます。
そのため、ステンレス鋼は半永久的に錆びない仕組みを作り出せるのです。
|ステンレス鋼製品のメンテナンス
しかしながら、何度も申し上げる通り、ステンレス鋼は万能ではありません。
例えば、「不動態皮膜」ですが、特に酸化性の酸には大きな耐食性を示しますが、非酸化性の酸に対しては耐食性が劣ります。
また、金属たわしで無理に傷をつけると、「不動態皮膜」の再生に支障を来すこともあります。
錆びた鉄をステンレス鋼の上に長時間放置すると、その錆がステンレス鋼に移ってしまうこともあります。
仮にステンレス鋼の製品が錆びてしまった際には、軽いものであれば、重曹で落とせます。
但し、頑固なものとなると、研磨剤などが入った専用のサビ落とし剤が必要となります。
注意すべきは、決して強い力でこすったり、金属たわしで強引にこすらないことです。
確かに錆びは落ちるかもしれませんが、ステンレス鋼の表面に大きな傷がついてしまい「不動態皮膜」が再生するどころか、直ぐに、また、錆びてしまう可能性があります。
表面をこするというよりは、磨くイメージで丁寧に行ってください。
また、「不動態皮膜」が再生を補助してあげる意味合いで、専用の保護塗装をしてあげる方法もあります。
ステンレス鋼製の製品などをご利用の際は、その優れた性能に過信することなく、大切に取り扱いください。
Daigo Shiroyama