ステンレス鋼の種類
- 2016.08.15
- カテゴリ: 知識|Knowledge
|ステンレス鋼
ステンレス鋼とは、鉄(Fe)をベースに、クロム(Cr)などを配合して人工的に造った金属です。
その定義は、「炭素含有量 1.2%以下・クロム含有量 10.5%以上の鋼」とされています。(ISO規格より)
ステンレス鋼製のスプーンやフォークの裏に「18-8」などと数字表記がありますが、これは、18%のクロムと、8%のニッケルが含まれていることを意味します。
クロムと言えば、鉄などを錆にくくするためのメッキ材として有名です。
表面が輝いている金属をステンレス鋼だと思っていたら、実は、クロムメッキされた別の金属だったなんてことも少なくありません。
そして、このクロム(Cr)が大気中の酸素(O)と結合する事で、表面に1~3nm(ナノメートル)程の薄い「不動態皮膜」を形成します。※1ナノメートル=100万分の1ミリ
この「不動態皮膜」が保護皮膜となり、最大の特性でもある耐食性を高めている事になります。
更に、ステンレス鋼の優秀さを高めているのが、不動態皮膜の自己修復機能です。
仮に加工中や使用中に不動態皮膜が破壊されてしまった場合でもメッキや塗装と異なり、鋼中のクロム(Cr)と大気中の酸素が結合し、瞬時に再生します。
この再生に時間がかかれば錆びが進行してしまうため、瞬時に再生することは重要な機能となります。
|ステンレス鋼の種類
ステンレス鋼には、その定義を守った上で、素材の含有成分や処理方法を変えることで、様々な用途に合った特性を持った種類があります。
それは、主な含有成分によって、オーステナイト系、オーステテイト・フェライト系(二相系)、フェライト系、マルテンサイト系に分けられます。
そもそも、あらゆるステンレス鋼が、いかなる環境においても常に優れた耐食性(錆びにくさ)を発揮する訳ではありません。
同様に強度、硬度、耐熱性や加工する上での成形性なども、そのステンレス鋼の種類によって特性は変わってきます。
つまり、用途に限らず、高価なステンレス鋼を使えば良いとは限らないと言うことです。
つまり、ステンレス鋼を上手に使いこなすためには、適材適所を考えた使い方が重要視されます。
ベンカンのステンレス配管など住宅内の給水や給湯などの一般配管用に使われるステンレス鋼は、オーステナイト系で、クロム(Cr)18%-ニッケル(Ni)8%を含有しているSUS304が使用されております。
SUS304は、ステンレス鋼の中でも優れた耐食性(錆びにくい)があるのは当然ながら、延性および靭性に富むことから塑性加工に適した材質でもあります。
先出のスプーンやフォークなどの食器類でも、耐食性に優れたオーステナイト系のステンレス鋼が多く使われています。
その他、一般配管の環境よりも、錆び易い厳しい環境である特殊配管ともなれば、SUS304にモリブデン(Mo)を2-3%添加強化したSUS316が使用される場合もあります。
マルテンサイト系は、耐食性能は劣りますが、焼き入れ(熱処理)をすることで硬度が高まることから、包丁・はさみなどの刃物、スプリング、ベアリング、ボルト、ネジ類、工具類などに利用されています。
耐食性(錆びにくい)などオーステナイト系とマルテンサイト系の中間的な位置づけになるフェライト系は、コストメリットを活かして、建築金物、蝶番、手摺、厨房用品、家庭雑貨、屋根ふき材などで多く利用されています。
|新しいステンレス鋼の開発
ステンレス鋼には、様々な素材を添加や処理方法などを研究することで、無限に新素材を開発できる可能性が秘められています。
例えば、一般環境での使用では、ご紹介したステンレス鋼で十分であると思われますが、時代の変化に合わせて様々なニーズに応えるための新しい種類が開発され続けております。
オーステナイト系に分類される析出硬化性ステンレス鋼は、特殊な熱処理(析出硬化処理)によって非常に高い硬度が得られます。
耐海水性、耐応力腐食割れ性に優れ、そのうえ強度も高いという性質があるオーステナイト・フェライト系は、オーステナイトとフェライトの二つの金属組織(二相)を持ちます。
その特性から、海水用復水器、熱交換器および排煙脱硫装置などの公害防止機器や各種化学プラント用装置に用いられています。
ステンレス鋼の需要が高まることで、安定した供給体制も重要となってきました。
オーステナイト系ステンレス鋼では、ニッケルが主要素材となります。
ニッケル(Ni)とは、レアメタルにも数えられる希少金属の一つであるため、その供給状況によって価格の高騰につながる場合も少なくありません。
そこで、ニッケルを含有しないフェライト系ステンレスの性能を高める研究が進んでいます。
現在、100を超える種類のステンレス鋼が存在していると言われていますが、日本の産業として見た場合は、ステンレス鋼の開発力および生産量は世界トップクラスです。
鋼鉄大手の総受注量の中でも、輸出が30%近くと最も多くを占めているくらいです。
国内に目を向ければ、家庭用および業務用機械が輸出に次いで13%、以降、建設用10%、産業用機械6%などとなっており、幅広い分野で使用されていることが判ります。
ステンレス鋼は、これからも非常に広範囲な分野、用途に適した様々な種類が開発されて行き、グローバルに普及していく将来性ある素材なのではないかと考えられております。
yuki tomiya