ステンレス鋼の外観仕上げ
- 2016.11.06
- カテゴリ: 知識|Knowledge
|ステンレス鋼とは・・・
生活の身の回りに普及するステンレス鋼ですが、意外と、その正体をご存知の方は多くありません。
ステンレスから想起されるもっとも多いイメージは、「錆びない」なのかと思います。
ステンレスですが、正式には、ステンレス鋼(stainless steel)と呼びます。
そもそも、ステンレス鋼とは、鉄(Fe)をベースに、クロム(Cr)などを配合して人工的に造った金属です。
その定義は、「炭素含有量 1.2%以下・クロム含有量 10.5%以上の鋼」とされています。(ISO規格より)
例えば、ステンレス鋼製のスプーンやフォークの裏に「18-8」と表記されていますが、これは、18%のクロムと、8%のニッケルが含まれていることを意味します。
このように、ステンレス鋼の定義に則した上で、様々な素材を含有させたり、加工処理を加えることで、様々な特性を持ったステンレスが存在します。
現在は、100以上の種類のステンレス鋼が存在しております。
ステンレス鋼ですが、一般の鋼類と比べると優れた耐食性を持っていますが、その種類の特性や使用環境によっては錆びる可能性も否定できません。
よって、特性を理解して、正しい条件の下でご使用いただくことが重要となります。
|ステンレス鋼コイル
ステンレス鋼は、その製造工程や表面処理によって、外観仕上げのイメージが違って来ます。
少し、専門的な用語も出てきますが、ご興味のある方はお付き合い下さい。
基本素材の「HOT材(No.1)」は、熱を掛けてローラーでコイル状に延ばす熱間圧延後に、熱処理、酸洗したステンレス鋼で、表面に光沢がなく銀から白に近い色です。
その「HOT材(No.1)」を熱を掛けないでローラーでコイル状に延ばす冷間圧延後に、熱処理、酸洗した後に、さらに冷間圧延して、表面に光沢を持たせた「2B材」は、灰色で表面に、やや光沢がある仕上げとなっています。
一般材や建材の多くは、この「2B材」仕上げが主流となっています。
例えば、ベンカンのステンレス配管の「モルコジョイント」は、「2B材」をベースに加工して真空熱処理をしていますので、表面に光沢はなく、薄灰色です。
医療用ガスの配管材などにも用いられるものには、「BA材」があります。
これは、「2B材」の表面の光沢が酸洗で失われない様に、還元性雰囲気または真空中で熱処理するブライトアニール処理と呼ばれる光輝焼鈍(こうきしょうどん)をすることによって光沢を保持させ、さらに軽い冷間圧延を施したものです。
「BA材」は、鏡面に近い光沢を持った仕上げで、医療用ガス配管以外に自動車部品、家電製品、厨房用品、装飾品などにも使用されています。
|ステンレス鋼の表面処理
ショットブラストは、「ステンレス鋼」に、小さな鋼製の粒(研磨材)を強く吹きつけることによって、酸化スケ-ルやバリを取ったり、表面の加工傷を研磨します。
「ショットブラスト」仕上げでは、基本的に、表面は、つや消し状になります。
そして、最も、ステンレス鋼のイメージが強い鏡の様な光沢のものは、実は、表面を「研磨」仕上げしたものです。
バフという回転させながら研磨する工法で鏡面状に仕上げます。
400番、500番、600番、700番、800番研磨と番手が上がると鏡面度のレベルが高くなります。
外観上の美観を向上するだけではなく、埃が付着してはならない半導体工場などのクリーンルームや目詰まりを抑える意味で食品工場のサニタリー配管などにも利用されています。
ご要望があれば、受注生産とはなりますが、ベンカンのステンレス配管にも意匠性を高めるために「研磨」仕上げを施すことが可能ですので、営業スタッフにお問合せ下さい。
また、手摺、柵、屋外建材金物(エクステリア)などで使用されているステンレス鋼には、長手方向に縦すじが入ったものも良く見かけます。
髪の毛のような細い線が入っていることから「ヘアライン」仕上げと呼ばれます。
敢えて、細かい縦傷を着けることで、独特のつや消し仕上げになります。
また、美観だけではなく、傷が着いても目立たない上に補修も容易な加工であることから、擦り傷などが着き易い箇所に使用されることが多い仕上げです。
よく勘違いされるのが、キッチンや洗面所の水栓器具です。
例えば、左のキッチンシンクの画像をご覧ください。
シンクは、ステンレス鋼板をプレス加工したもので、表面はショットブラスト処理が施されています。
それでは、水栓器具の素材は何でしょうか?
光り輝いているだけにステンレス鋼だとお答えされる方々が少なくありません。
しかし、ほとんどの場合は、銅合金材にクロムでメッキされたものなのです。
一口にステンレス鋼と言いましても、様々な素材の種類があったり、様々な表面仕上げ方法があることから、お客様のニーズに幅広く、お応えできる素材であるとも言えます。
ここでご紹介させていただいたものも一部でしか過ぎませんので、是非、身の回りにどんなステンレス鋼があるか注目して見て下さい。
fumihiko hosaka