トルク(torque)
- 2021.06.23
- カテゴリ: 知識|Knowledge
|標準化
企業は製品やサービスの性能、品質、安全を顧客に提供する上で、社内標準化に取り組みます。
そのため標準化には、必ず、論理的に標準化された項目と単位が必要となります。
例えば、ボルトやナットの締め付けが必要となるものは、トルク(torque)も標準化項目の一つです。
トルクは、自動車やオートバイのエンジンの性能を表す際に最大トルク○○(N・m)と記載されています。
また、ボルトやナット、ネジを締付ける際にも締め付けトルク○○(N・m)で締付けてくださいと記載されていたりします。
そのため「トルクという言葉を聞いたことがありますか?」と質問した場合、多くの方が「聞いたことがある、見たことがある」と回答されるかと思います。
では、「トルクとは?」と尋ねられると、いかがでしょうか?
|トルク
トルクとは、力学においてある固定された回転軸を中心に働く、回転軸の周りの力のモーメントのことを言います。
物体を回転させる力のモーメントですので、回転力や力の能率、回す力、ねじる力(ねじりモーメント)などとも言われます。
日常にある場面で考えると、自転車のペダルを踏む、ネジをドライバーで締める力がトルクに当たります。
また、雑巾を絞る、スプーンやお玉などで料理を混ぜる力も回す力、ねじる力となりますのでトルクに当たります。
トルクは次の式で表されます。
T (N・m) = F (N) × L (m)
T : トルク (N・m)
F : 物体に加わる力 (N)
L : 回転軸から力が加わる点までの距離(m)
自転車を例にすると、漕ぐ際、ペダルを下方向に踏み込むと車軸にトルクが加わります。
そして、そのトルクの大きさに応じて、自転車は前へと進みます。
力があり体重もある大人が漕ぐ場合と力が弱く体重も軽い子供が漕ぐ場合とでは、ペダルに加わる力:Fが異なります。
力を加えるペダルの距離:Lは同じであるため、大人の方がトルク:Tは大きくなり、その分、自転車は前に進むことになります。
子供が同じトルクを出すには距離:Lを大きくすることが必要です。
自転車に関して言えば、ギアが固定という条件では脚力のある人の方が速く走れるということになります。
|配管接合におけるトルク管理
配管接合の場面でトルクを考えると、ボルトやナットをスパナで締め付ける際に用いられます。
テコの原理で捉えた場合、支点付近で力を入れて持ち上げるより、支点からの距離を長くとって持って持ち上げる方が小さな力で持ち上げることができます。
つまり、同じトルクで締め付けるのであれば、柄の長い(Lが大きくなる)スパナを使用した方が小さい力でナットを締め付けができることになります。
例えば、締め付けトルクが100(N・m)必要なナットを締め付ける際、L=0.5(m)のスパナを使用すると加える力は200(N)=20.4(kgf)となります。
仮に2倍の長さL=1.0(m)のスパナを使うと、力:Fは100(N・m)=10.2(kgf)、逆に半分の長さL=0.25(m)のスパナを使うと、力:Fは400(N・m)=40.8(kgf)となります。
尚、ボルトやナットの締め付けトルクは、右画像のようなトルクレンチを使用することで測定することができます。
また、トルクレンチを使用しなくても右下図のようにレンチの柄にばね秤を付けて、柄と角度が直角になる状態で引っ張ることで測定することもできます。
ばね秤の数値は加えた力となります。
その数値に回転軸の中心から力を加えた点までの距離を測定し、積算するとトルクが算出できるのです。
※ばね秤で表示される数値は単位がkgfとなりますので、1(kgf)=9.806665(N)で単位をNに換算します。
その他、測定するものを固定する台などが必要にはなりますが、ばね秤などを使用すれば特殊な工具がなくても工夫によってトルクを測定することが可能です。
例えば、ペットボトルのキャップやネジなどなど身近なものがどの程度のトルクで締まるのかを確認してみるのも面白いかと思います。
ボルトやナット、ネジを締め付ける工具にはレンチやスパナ、ドライバーといったものがあります。
ドライバーなどは柄の部分が工夫されて力を加えやすい形状になっているものもありますし、締め付けトルクが安全にかかわるものは正確にトルクを加えるための構造や形状をしているものもあります。
工具の形状や構造は、トルクを加えるという点から見ると、何故そのような形状や構造になっているかがわかるかもしれません。
|BKジョイントⅡの袋ナット締め付け
ベンカンの製品の中で、配管接合の際にトルクをかけて接合するのは、拡管式継手の BKジョイントⅡとなります。
BKジョイントⅡは、対応する一般配管用ステンレス鋼鋼管(JIS G 3448)に袋ナットを通し、専用工具で管端を拡管します。
そして、袋ナットと継手本体をパイプレンチを使用して締め付けることで配管接合が完了します。
袋ナットに必要な締め付けトルクがかかり、最後まで締め付けられると、本体先部と袋ナットの内面がメタルタッチする構造となっております。
必要となる締め付けトルクですが、呼び径ごとに異なりますが、確実な施工を行っていただくために本締めを行う際の推奨パイプレンチを設定しています。
先にお話させていただいているとおり、締め付ける際に必要となる力:Fは柄(距離)によって変わります。
そのため、締め付けに必要なトルクがかかるパイプレンチの長さを選定し、設定しております。
Tetsuo Yoshida