コーチング「秋山 幸二」さん
- 2012.12.30
|指導の考え方
各企業の経営者が多く参加する会合のイベントで、秋山幸二さんの講演がありました。
秋山幸二さんは、プロ野球選手として大変、ご活躍された方です。
また、監督としても任期6シーズンの内、ソフトバンクをリーグ優勝3回、内2回を日本一に導かれるという輝かしい実績を残されておられます。
監督として特に重要視したのは、「コーチング」だったとおっしゃってました。
従来、プロ野球の指導方法は「ティーチング」が多かった様です。
「ティーチング」とは、知っている人が知らない人に、あるいは、できる人ができない人に「教える」と言う指導方法です。
しかし、「教える」が「押しつける」になってしまう傾向もありました。
実際にプロ野球でも、監督やコーチが現役時代の自分のプレーを選手に押し付けるケースも少なくなかったようです。
対して、秋山さんの指導の考え方は、その選手に合った教え方をしないと選手は成長しないと言うものでした。
監督やコーチの顔色を見て、指示を待っている様な選手では成長しないとも断言されていました。
|コーチング
「コーチング」のコーチ(coach)の由来は馬車であり、 馬車が物や人を目的地へ運ぶ(導く)ことから、指導者を指してコーチと呼ばれるようになりました。
「コーチング」では、「教える」という行為ではありません。
対話により、決して一方的なものではなく「双方向なコミュニケーション」を重要視します。
この「問いかけて聞く」というヒント的な対話を通して、指導を受けた本人から自発的に様々な考え方や行動の選択肢を引き出します。
そして、結果的に指導された本人が徐々に自分で問題解決能力を身につけて行くこととなります。
野球をあまり詳しくない方がいらっしゃるかと思いますが、野球の試合は、攻撃と守備が3つのアウトで入れ替わり、それが9回展開されます。(場合によっては延長あり)
また、1つのアウトの中にも、バッター、ピッチャーは当然ながらランナーであったり、各守備のポジションだったりで状況がめまぐるしく変わります。
つまり、野球は、常に動いていると言うことです。
その様な環境下で、監督やコーチの指示待ちの選手だったらどうなるのかです。
秋本さんは、良くも悪くも選手の行動に対して、何故その様な行動をしたのかを確認したそうです。
例えば、盗塁をしてアウトになったら、なぜ、アウトになったのかの問題原因を考えさせる。
そして、盗塁が成功するためのアイデアを自分で考えさせ、言葉として出させるのだそうです。
言葉あるいは文章にすることで、情報を共有する手法は、西武時代の監督だった広岡達朗さんの手法だったそうです。
結果、失敗を決して失敗で終わらせない。
正にPDCAサイクルを回すことを促されていたのだと思います。
|エンパワーメント
「主体性を持って能動的に先読みし、何をすべきかを創造できる選手」と「何も考えないで、何かが起きてから場当たり的な選手」とでは結果は明らかに違って来るはずです。
仮に同じ失敗だったとしても、将来的には確実に違う。
失敗して止まっていては成長する訳もなく、直ぐに切り替えて前向きに行動するしか成長する術はありません。
何事でもそうですが、最初から上手くできることなどあり得ません。
例えば、漠然とフリーバッティングを繰り返しても上手くはなりません。
一回一回を振り返り、次にどう活かすのかを考えて、筋肉を意識して身体に覚え込ませることで、同じ100回でも結果は違ってきます。
仮に今は出来なくとも、自律して意識して取り組み続けたら、いつか嘘みたいに出来るようになるはずです。
そして、それを促すのがコーチの役割なのだとおっしゃってました。
秋本さんの「コーチング」とは、エンパワーメント(empowerment:権限委譲)に通じるものだと考えました。
「エンパワーメント」とは、与えられた役割(目標)を達成するために、組織の構成員に自律的に行動する力を与えることです。
その特徴は、自律性を促すことと、それに適した環境づくりだと言えます。
それを考えると秋山さんが布いたコーチングは、監督の考えをチーム内で共有し、選手に対して「やれ!」ではなく、選手自身に考えさせる、そして、選手の創造力を掻き立てるような環境づくり、つまり、「エンパワーメント」であったのではないかと思いました。
我妻 武彦(Takehiko Wagatsuma) 代表取締役社長