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コラム

社会貢献「ステンレス配管の授業」

  • 2022.04.13

|企業の社会的責任とサステナビリティ

 

近年、企業に対してその社会的責任(CSRCorporate Social Responsibility)や社会における存在意義(パーパス:Purpose)が強く問われています。これは単なるトレンドではなく、企業が社会の一員として持続可能な発展に貢献すべきだという認識が世界的に広まっていることの表れです。

 

特に2015年の国連サミットで採択されたSDGs(持続可能な開発目標)は、この動きに大きな影響を与えました。17の目標と169のターゲットを掲げたSDGsは、環境保護から貧困撲滅まで幅広い課題に取り組むことを世界に呼びかけています。これを契機に、世界中の企業や組織がサステナブル社会の構築に向けて具体的な行動を起こしています。

 

建築業界もこの潮流から外れることはできません。むしろ、建築物が環境に与える影響の大きさを考えると、サステナブル建築への移行は業界の責務と言えるでしょう。省エネルギー設計、環境負荷の少ない材料の使用、長寿命化など、様々な観点からサステナブル建築の普及が急速に進んでいます。

 

社会貢献「サステナブル建築」

 

|ベンカンの事業とサステナビリティへの取り組み

 

ベンカンは、ステンレス配管に特化したメカニカルジョイント等の管工機材製品の開発・製造・販売を主事業としています。一見すると地味な分野かもしれませんが、建築物の寿命や環境性能に大きく影響する重要な要素です。

 

我々は、ステンレス配管をサステナブル建築に適合したサステナブル配管と位置付けています。その理由は、ステンレス配管が持つ優れた耐久性、メンテナンス性、リサイクル性にあります。これらの特性は、建築物のライフサイクルコストの削減と環境負荷の低減に直接的に寄与します。

 

当社は事業を通じてステンレス配管の普及に積極的に取り組んでいますが、それだけでなく、事業活動以外でも社会貢献に努めています。その代表的な活動が、建築を学ぶ学生への授業です。

 

現在、工業高校や技術専門学校など、年間数校から講師として招かれています。この活動は直接的な業績向上につながるものではありませんが、将来の建築業界を担う人材育成という観点から、非常に重要な社会貢献活動だと考えています。若い世代にステンレス配管の価値を伝えることは、長期的には業界全体の発展につながり、ひいては持続可能な社会の実現に貢献すると信じています。

 

 

|ステンレス鋼の基礎知識

 

授業では、まずステンレス鋼の基礎知識について解説します。

日常生活でステンレス製品を目にする機会は多いものの、その特性について正確に理解している学生は意外に少ないのが現状です。

 

我々は以下の点を重点的に説明しています

1. ステンレス鋼の定義:ステンレス鋼は、鉄をベースにクロム(Cr)を10.5%以上含有させた合金鋼です。

さらに、用途に応じてニッケル(Ni)やモリブデン(Mo)などの元素を添加することで、様々な特性を持つステンレス鋼が作られています。

 

2. 主な特徴:ステンレス鋼の最大の特徴は、その優れた耐食性(錆びにくさ)です。

これは表面に形成される不動態皮膜と呼ばれる極めて薄い酸化皮膜によるものです。この皮膜が酸素や水分から内部を保護し、腐食の進行を防ぎます。

 

3. 誤解の解消:「ステンレスは絶対に錆びない」という誤解を解くことも重要です。

実際には、環境や使用条件によっては腐食する可能性があります。例えば、海岸付近での使用や強酸との接触など、過酷な条件下では適切な対策が必要です。

 

4. サステナブル建築への貢献:ステンレス鋼の高強度、高耐久性、優れたクリーン性、リサイクル性は、サステナブル建築に大きく貢献します。

特に、長寿命化による資源節約、メンテナンス頻度の低減によるコスト削減、リサイクル性の高さによる廃棄物削減などが重要なポイントです。

 

5. グレードの種類:一口にステンレス鋼と言っても、様々なグレードがあります。

代表的なものとして、オーステナイト系(300系)、フェライト系(400系)、マルテンサイト系などがあり、それぞれ特性が異なります。

建築用途では主にオーステナイト系が用いられますが、用途に応じて適切なグレードを選択することの重要性を説明しています。

 

ステンレス鋼

 

|ステンレス配管システム

 

ステンレス配管は、ステンレス鋼を活用した建築システムの一つです。

かつては溶接接合やねじ込み接合など、専門的な高い技術力や設備が必要だったため、主に工場などの特殊配管にしか使用されませんでした。

しかし、メカニカルジョイントの開発により、施工の簡便化と信頼性の向上が実現し、一般建築物の配管にも広く普及するようになりました。

 

現在、メカニカルジョイントは主に3種類あります。

1. 拡管式継手:配管の端部を拡管し、継手に挿入して接合する方式。

高い気密性と引抜強度が特徴です。

 

2. プレス式継手:専用工具で継手を圧着して接合する方式。

作業が速く、大量の接合に向いています。

 

3. ワンタッチ式継手:配管を差し込むだけで接合できる方式。

狭い場所での作業に適しています。

 

これらはすべて国土交通省が認めるステンレス協会SAS322規格を取得しています。つまり、品質と信頼性が公的に保証されているということです。

 

授業では、各継手の特性を詳しく説明した上で、実際に施工を体験してもらいます。学生たちに実際に手を動かしてもらうことで、理論と実践の両面から理解を深めてもらいます。

これにより、将来彼らが現場で働く際に、状況に応じた適切な選択ができるよう指導しています。

 

 

|ライフサイクルコストとサステナビリティ

 

ステンレス配管の導入を躊躇する理由として、しばしばイニシャルコストの高さが挙げられます。

確かに、他の材料と比較すると初期投資は大きくなります。

しかし、我々は学生たちにライフサイクルコストの観点から考えることの重要性を強調しています。

 

ライフサイクルコストとは、建物の企画・設計から建設、運用、修繕、解体・廃棄に至るまでの全期間に要する費用のことです。ステンレス配管は以下の理由からライフサイクルコストの低減に貢献します。

 

1. 長寿命:高い耐食性により、長期間にわたって交換の必要がありません。

2. メンテナンス費用の削減:耐久性が高いため、点検や修理の頻度が低くなります。

3. 省エネルギー:内面の滑らかさにより、流体の摩擦損失が少なく、ポンプ動力の節約につながります。

4. リサイクル価値:ステンレス鋼は100%リサイクル可能で、廃棄時の価値も高くなります。

 

これらの特性は、サステナブル建築の理念とも合致します。

具体的には、

– 資源の有効活用:長寿命化により、資源の使用量を削減できます。
– 廃棄物の削減:交換頻度が低いため、廃棄物の発生を抑制できます。
– エネルギー効率の向上:ポンプ動力の節約はCO2排出量の削減にもつながります。
– 循環型社会への貢献:高いリサイクル性は、資源の循環利用を促進します。

 

これらの点を丁寧に説明することで、学生たちがコストと環境の両面から建築設備を考える視点を養うことを目指しています。

 

 

後藤

 

  後藤 祐亮(Yusuke Gotou)  営業1課 課長  兼 営業1課 東京営業所 所長

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