安全衛生「墜落制止用器具」
- 2022.04.28
|安全衛生
高度経済成長期の日本は、多くの大規模工事や生産技術の革新による労働環境の変化も相まって、多くの労働災害を発生させるに至りました。
昭和44年(1969年)、当時の労働省の方々が中心となり、専門家を交えて法令の整備に取り組みました。
結果、昭和47年(1972年)に成立したのが労働安全衛生法です。
労働安全衛生法とは、労働者の安全と衛生についての基準を定めた法律です。
その目的は、職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境を形成することにあります。
また、その手段として、労働災害の防止のための危害防止基準の確立、責任体制の明確化、自主的活動の促進の措置など総合的、計画的な安全衛生対策の推進が義務付けられています。
|高所作業
職場においては、労働災害が発生する可能性のある作業が存在します。
例えば、労働安全衛生法の中では、2m以上の高さで行う高所作業が、それに該当します。
具体的には、足場などを用いた建設工事や解体工事、建物の天井内の点検作業、高層ビルの窓の外部からの清掃作業、鉄塔など高さのある屋外設備の保守点検作業などが考えられます。
これらの高所作業で考えられる最も重大な労働災害は墜落です。
そのため労働安全衛生法では、高所作業における墜落を防止する措置として、作業床を設け、その作業床の端や開口部等には囲い、手すり、覆い等を設けて墜落自体を防止することを原則としています。
その上で、こうした措置が困難な場合に限り、「墜落防止用器具」による代替措置が認められています。
「墜落制止用器具」ですが、従来は、安全帯と呼ばれていました。
従来の安全帯は、胴ベルト型とも呼ばれ、墜落時に内臓の損傷や胸部等の圧迫による危険性が指摘されておりました。
このため、2022年1月1日に規格が変わりました。
その際に安全帯の名称も廃止され、「墜落制止用器具」と変わっております。(安衛令第13条)
以降、安全帯と表記のものは旧規格となります。
引用:「労働安全衛生法令における墜落防止措置と安全帯の使用に係る主な規定」厚生労働省 安全衛生部安全課 建設安全対策室
|墜落制止用器具
ベンカンにおいて、「墜落制止用器具」を使用する必要性のある業務は頻繁にあるものではありません。
それでも、製品を納入した建築現場の立ち合いの際に、施工状況を確かめるために天井内へ潜ることがあります。
その際は天井についている点検口から、天井内に入っての足場作業となりますので、高所作業に含まれます。
ベンカンでは、規格改正に伴いフルハーネス型と胴ベルト型の2種類の「墜落制止用器具」を導入しております。
フルハーネス型は、着用者の身体を肩、腰部、腿などの複数箇所で保持する状態になります。
見た目もさることながら重量もありますが、万が一高所からの墜落があった場合に、衝撃が分散されて体への負担も少なくなります。
フルハーネス型を着用して作業をするには特別教育の受講が必要となります。
新規格からフルハーネス型が原則となりますが、作業床の高さが6.75m以下であれば胴ベルト型の使用が認められています。
胴ベルト型は、腰の部分で装着し従来の安全帯と同じ見た目の形状になります。
業務においては、何よりも安全が優先されます。
故に、「墜落制止用器具」の意味合いを理解すれば、装着時には緊張感が増します。
目を向ける機会が少ないかもしれませんが、自分や自分以外の命を守る大切な道具は常日頃から確認を怠らないことが重要になります。
松本 光希(Mitsuki Matsumoto) 開発技術部