戦略人事「教育の目的」
- 2012.12.12
|戦略人事
組織とは、「意識的に調整された2人またはそれ以上の人々の活動や諸力のシステムである。」と定義したのは、アメリカの経済学者であるチェスターバーナードです。
人は、社会やコミュニティ、または個人の特定ニーズを満たす上で、一人で成し遂げることができることには限界があるために、何らかの組織を形成します。
そして、それぞれの組織は、それぞれ特有の目的を果たすために、社会の中で様々な活動を繰り広げます。
翻せば、その組織の中に、その組織の目的を果たす上で障害になるような存在、あいは、その存在を容認してしまう組織は、いずれ組織として機能しなくなってしまうといえます。
同じ目的を持った組織の一員と言えども、個々には、個性や経験、能力にバラつきがあるのは事実です。
そこは、個々が自律的に、より高い能力を発揮できるように知識の習得に取り組まねばなりません。
加えて、組織としても、同じ目的を果たす上での考え方に乖離が生じないように定期的に情報を発信することも重要となってきます。
故に今後の組織においては、戦略的人的資源管理(戦略人事)の重要性が高まっています。
|記憶
人の記憶について考えます。
学生時代を思い出せば、何かを覚えようとしたとき、それが容易ではないことは誰にも理解できるかと思います。
記憶には、それを司る脳を基準とした「外部記憶」と「内部記憶」があるとされます。
つまり、「外部記憶」とは、脳の中にない記憶であり、「内部記憶」とは脳の中に蓄積された記憶です。
そもそも、脳の中には元々は情報はありませんので、何らかの手段で「外部記憶」から情報を得ることになります。
本人からしたら知らない情報である「外部記憶」を得ようとするならば、インターネットや参考書などで調べたり、知っている方に尋ねる以外に手段はありません。
さらに、「内部記憶」には、「短期記憶」と「長期記憶」があるといわれています。
「短期記憶」は、アメリカの心理学者 W.ジェームズが一次的記憶(primary memory)とも名づけている通り、比較的短い、秒単位の時間しか保持されない記憶で、何れ「長期記憶」や「外部記憶」に移動してしまいます。
また、ワーキングメモリーとも言えるように、活性化されている記憶ですので、何らかの問いに対して迅速に答えが出ます。
対して、「内部記憶」にはあるものの、なかなか思い出せない記憶があります。
これが、「長期記憶」です。
「長期記憶」ですが、「短期記憶」に比べて長い時間保持されますが、なかなか想起されません。
さらに「内部記憶」ですが、何らかの刺激を与えないまま放置していれば、何れ「外部記憶」に戻ってしまいます。
つまり、完全に忘れてしまいます。
実験により、人の脳の記憶の忘却率を導き出したのが、「ヘルマン・エビングハウスの忘却曲線(右図)」と言う理論です。
それによると、20分経過すると42%、1時間経過すると56%、1日経つと、74%も忘れてしまうといいます。
その後、1週間だと77%、1ヶ月だと79%であることから、常に短期記憶に留めておくには、日々のフォローアップが欠かせません。
その意味でも、メモを取るなどは、忘却してしまわないための基本的な予防策であることも分かります。
|教育の目的
戦略人事においては、教育が重要な取り組みであると考えております。
組織の属する個々の評価は、自身が備えた能力を発揮して成果に結び付けるかです。
また、既存の能力基準が環境の変化から求められる能力も変化していることから、リスキリングの重要性も高まっています。
それらの能力を高めるには、実務を通しての体験と知識を高める学習が重要です。
そして、体験も学習も個々が自律的に高める努力をすべきものです。
しかしながら、組織としても、共通目的を達成させるためにも、一定レベルの体験や学習を提供する必要性があると考えます。
それが、戦略人事における教育です。
ところが、教育をすること自体が目的となったり、教育を受けることが目的となってしまっては意味がありません。
実際、勉強会を開催した際には、理解したと答えていたスタッフが、翌年、同じ勉強会に参加してみると、初めて聞いた理論だったと平気で答えるケースも少なくありません。
これは、その場限りの勉強会を開催することが目的だったり、その場限りの参加が目的となってしまった短期記憶で終わってしまった典型かと思います。
教育は、何らかの目的を果たすための能力を、個々に長期記憶に定着させるものでなければ意味がありません。
よって、単発で長時間の勉強会などを実施するよりも、短時間で良いので、体験や知識を忘却しない頻度で継続的に実施することが重要です。
その上で、節目として長時間の勉強会などを組み込むことは良いかと考えております。
もちろん、どんなに高い能力を持っていても、それを発揮できなければ、宝の持ち腐れであることも認識しておく必要があります。
特に組織の共通の目的は、永遠に長期記憶に定着させなければならないものです。
その意味でもインターナルブランディングの取り組みでは重要となります。