品質「ヒューマンエラー」
- 2023.09.21
|TQM(総合品質マネジメント)
製造業にとって、「安全第一」ともいわれる通り、災害とは、決して、あってはならないものです。
ところが、大きな問題に至らないまでも、どんな人に完璧な人でも必ず何らかのエラーをします。
つまり、ヒューマンエラーです。
表面に現れている事柄は全体の極一部にすぎないことの例えで「氷山の一角」という言葉がありますが、この言葉を論理的に示したのが、常識的な労働災害に対する経験則の一つである「ハインリッヒの法則」です。
「ハインリッヒの法則」とは、労働事故・災害の発生確率を調査してまとめたもので、「1:29:300の法則」といわれています。
具体的には、1件の重大な事故の背景には、29件の軽微な災害の存在があり、さらに、29件の軽微な災害の背景には、300件もの災害に至らない「ヒヤリ・ハット行為」の存在があるということです。
この「ヒヤリ・ハット行為」がヒューマンエラーにあたります。
ベンカンではTQMによる品質保証体制の構築に取り組んでおります。
TQM(Total Quality Management)とは、総合品質マネジメントといわれる通り、従来の品質管理にばかり依存するのではなく、製品を販売した後のアフター管理も含め顧客満足(CS)を核として推進されます。
その意味でも、施工時におけるヒューマンエラーに対応した製品開発を重要視しております。
|ヒューマンエラー
人間が何らかの行動に至るまでには、視覚、聴覚、体感覚から受け取った情報を脳に伝達し、それを記憶と照会して、行動の方向性を判断・決定して、実際の行動に移しています。
対して、ヒューマンエラーとは、計画された一連の活動の中で意図した結果を得ることの妨げになった人間の予期せぬ行動のこととされています。
つまり、行動に至るまので脳内の情報処理の過程で発生するものであって、人間本来の行動特性でもあるとされています。
従来、配管の接合は、溶接接合やねじ込み接合が一般的でした。
ただ、これらの接合において一定基準の品質を得るには、作業者の熟練した技術が必要です。
そこで普及しているのが、配管接合の機械化ともいえるメカニカルジョイントで作業者の技量に委ねられていた配管接合を機械化させることで、接合品質の均一化を図っています。
ところが、メカニカルジョイントにおいても、その施工要領に則らない作業、つまりヒューマンエラーによる漏水事故、俗称 ポカが発生する場合もあります。
|セーフティー機能
ヒューマンエラーが人間本来の行動特性とするならば、その撲滅は非常に難しい課題となります。
しかし、ヒューマンエラーが引き起こす重大な事故を防止することは可能と考えております。
ハインリッヒの法則の通り、ヒューマンエラーの発生件数を抑えることが、大きな問題を抑制する効果があります。
そのため、ベンカンにおきましては、施工前に必ず、作業者の皆さんに施工講習会を受講していただいております。
その際には、各メカニカルジョイントの施工要領と共に重大注意事項を徹底して訴求させていただきます。
※受講証明証にも記載させていただいております。
その上で、ヒューマンエラーが発生することを前提としたセーフティー機能(ポカよけ機能)を各メカニカルジョイントに設けております。
例えば、拡管式のBKジョイントⅡには、袋ナットを完全に締め切らない場合に発生する緩みによる脱管を防ぐためのセーフティー機能があり、また、袋ナットが手締めなどの場合には確認リングが目視できる機能が設けられております。
プレス式のダブルプレスには、パイプの差し込み不足により発生する脱管を防ぐためのセーフティーエッジ、プレス作業をし忘れた際、水圧試験時に発見できる「セーフティー凹凸リング」が備えてあります。
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また、継手本体に設けられている機能ではありませんが、差し込み代のマーキングや六角ゲージによるプレス寸法の確認等もポカを発見するための重要な手段だと考えております。
とにかく、ヒューマンエラーの撲滅は困難です。
故に、ヒューマンエラーは起こることを前提に対策することが重要です。
作業現場におかれましては、その管理を徹底していただきたいと思います。
また、メーカーとしても、ヒューマンエラーを重大な事故に繋げないセーフティー機能を備えたメカニカルジョイントの開発・改良に取り組んで参ります。
大川 智之 (Satoshi Ookawa) 技術部 開発技術課 課長代理