アルミニウムとは
- 2018.05.16
|歴史の浅い金属
アルミニウムは一般には省略されて「アルミ」と呼ばれることが多い金属です。
我々の身の回りに多く目にするアルミニウムですが、純粋なアルミニウム単体の発見は1825年と言われています。
1887年に工業的な精錬法が確立して実用化してから約130年です。
銅が使われ始めたのは紀元前3500年頃と言われていますし、その後の産業革命を支えた鉄などと比べても圧倒的に歴史の浅い金属です。
しかし、アルミニウムですが、地球の地殻を構成する全元素の中では、酸素、ケイ素に次いで第3位であり、第4位の鉄よりも上位なのです。
その埋蔵量ですが、なんと、鉄の2倍もの開きがあると言われています。
これまで地球上に豊富に存在するにも関わらず発見が遅れたのは、アルミニウムが他の元素と化合物を形成し易い特性があるためです。
つまり、自然界にはアルミニウム単体で存在することは非常に稀なために発見が遅れたのです。
翻せば、アルミニウムは、様々な合金を作りやすい特性を持っているという事にもなります。
最外殻電子とは、アルミニウムの場合、原子核の周りを三重の軌道で電子が運動しています。その最も外側を回っている電子のことです。
金属としてのアルミニウムの歴史は短いのですが、アルミニウム化合物とは知らずに紀元前より人類が使用してきたものに「明礬(ミョウバン)」があります。
これは皮革のなめし剤、日干し煉瓦の材料(固くて強い)、染色剤への添加物(色が鮮やかになる)、目薬等々に使用されていました。
「粘土から作られた銀」と呼ばれていたアルミニウムでしたが、明礬がアルミニウムの化合物と明らかになったことで、その名称であるalum(アルム)から「Aluminium」と銘々されました。
|アルミニウムの物理的特性
1.重量が約1/3
その物理定数を右図にて、銅と比較します。
アルミニウムは銅に比べて原子番号(原子核の中にある陽子の個数を表した番号)が小さいにも関わらず、原子半径が銅より大きい事から比重が約1/3と軽い金属です。
2.融点が低い
アルミニウムは、融点が低いために、溶接などのように高熱を使用する用途では注意が必要です。
反面、少ないエネルギーで溶解させることが可能であることから、例えば、再生地金を造る際には、新地金と比較して3%程度のエネルギーで可能です。
3.ガルバニック腐食に注意
標準電極電位を見ればアルミニウムは非常に卑な金属であることがわかります。
銅やステンレス鋼などの貴なる金属との併用時には注意が必要です。
4.強度・硬度
アルミニウムですが、純アルミニウムと言われるものの強度や硬度は、銅と比較しても劣ります。
しかしながら、ご存知の方が多いと思われるジュラルミンに代表される合金となると強度は大幅に強化されることになります。
例えば、硬度指数であれば、一般的なアルミニウム(A5052)が65HB注1)であるのに対して、ジュラルミンA2024は120HBです。
対して、硬度の高い金属として知られるステンレス鋼(SUS304)は、187HBです。
様々なアルミニウム合金があることから、用途に合わせたものを選定する必要があります。
※注1)HBは、「ブリネル硬さ」を表わす記号です。
5.優れた耐食性
アルミニウムはステンレス鋼と同様に、大気中において表面に不動態皮膜を形成するために非常に高い耐食性を示します。
不動態皮膜の厚さは10Å程度で非常に緻密な構造であり、万が一傷ついて破壊されも大気中の酸素とすぐに結合し再生成されます。
注:Å(オングストローム)=100億分の1m=0.1nm(ナノメートル)
アルミニウムですが、供給面とコスト面で大きなメリットを出せる素材であると考えられます。
あとは、用途と、その特性と考えた合金を選定することが重要な素材です。
Hajime Sakayoshi