アルミニウムの歴史
- 2018.07.31
|金属アルミニウムの開発
アルミニウムの歴史を語る上で、明礬(ミョウバン)の存在は欠かせません。
ミョウバンとは、アルミニウムの化合物のことであり、人間が使用し始めたのは軽くて硬い日干し煉瓦や壺等の材料として紀元前5000年頃だと言われております。
それが、紀元前2000年頃の古代エジプトでは、植物染料の色を鮮やかにする材料や皮革のなめし材、目薬等、染色剤、防水剤、消火剤、皮なめし剤、沈でん剤などとしても広く使用されていました。
沈殿剤と言えば、水道事業に関わる方ならご存じかもしれませんが、現代の浄水場においても「凝集・沈でん池」で、水の中の濁りなどを取り除くために、固めて沈める凝集剤として、ミョウバンが使われたりしています。
ただし、この時点ではこれが金属の酸化物であることは全く知られておらず、「金属以外の形で人類に貢献した最初の鉱物」と述べる人もいます。
1782年 フランスの科学者 ラポワジュが、ミョウバンは、酸素との結合力が強く、還元が難しい金属酸化物の可能性が高いという説を発表します。
1807年 イギリスの電気化学者 ハンフリー・デービーが、ミョウバンを電気分解して、未知の元素を発見し、アルミニウムの語源となるアルミアム(Alumium)と名付けました。
その間、様々な科学者たちの研究を経て、1825年 ついにデンマークの電気物理学者 エルステッドは、世界で初めて、塩化アルミニウムから化学的方法により、金属アルミニウムの分離に成功します。
|日本とアルミニウム
1867(慶応2)年にフランスで開催された「パリ万国博覧会」には、当時のフランス皇帝であるナポレオン三世の勅令により、サントクール・ドビーユが精錬したアルミニウムが展示されました。
その際の触れ込みは、「粘土から作られた銀」でした。
ここで言う粘土とは「含水珪酸アルミ粘土」つまり、ミョウバンの事で、13世紀頃の錬金術師たちは、この粘土からアルミニウムを精錬する事を狙っていたことが分かります。
出展されたアルミニウムは、軽く、銀のような光沢を持ち、来場者たちから大絶賛を浴びましたが、高価で貴重な金属であったために貴族階級のみが用いる事が出来ました。
また、この「パリ万国博覧会」は、日本が初参加した万国博覧会としても有名であり、時の将軍慶喜の名代として派遣を命じられた徳川昭武(慶喜の弟)が、初めてアルミニウムを手にした日本人となりました。
その後、日本にも持ち込まれるようにまります。
日本でも、その軽い金属は注目され、「軽銀」と呼ばれ、1918(大正7)年の新聞「高岡新報」に「富山県下に於ける軽銀興業について(高峰譲吉:タカジアスターゼの発見者、富山県高岡市出身)」という論文が掲載されています。
現在多く用いられる「軽金属」という言葉は、昭和の初め頃から使われだしたと言われています。
そして、日本で初めてアルミニウムが製造されたのは、日本人が初めて、アルミニウムを手にしてから27年後の1894年のことです。
アルミニウムですが、1807年に金属アルミニウムが初めて作られてから、まだ210年しか経っていません。
そして、1887年に工業的な精錬法が確立して実用化してから、130年という歴史の浅い金属と言えます。
|実績としての用途
建築用:アルミサッシ、カーテンウォール等
食器関係:アルミ缶、食器等
船舶:LNG船のタンク、高速旅客船、全アルミニウム製巡視船(海上保安庁)等
自動車:ボンネット、エンジン、ホイール等(日本者では車の重量の7~8%、欧米では14~15%)
航空機:機体、翼、補助翼、スポイラー等(ジュラルミン合金)
ロケット:機体、衛星フェアリング※、燃料タンク、宇宙ステーションの主構造等
鉄道:新幹線車両、地下鉄車両等
電子デバイス:電解コンデンサー、ボディー等
※人工衛星を格納する先端部分
ジュラルミン(Duralumin)は、1903年ドイツ中西部のデュレン(Düren)で、アルフレート・ヴィルムによって偶然に発見された合金で、発見された地名デュレン(Düren)とアルミニウム(aluminium)の合成語です。
高い耐破断性と超軽量から航空機用資材として広く用いられました。
その後、超々ジュラルミンは1936年(昭和11年)に、日本の住友金属工業が海軍航空廠の要請により開発した日本生まれの合金で、零戦の主翼等に使用されました。
加工硬化によって高い引っ張り強度と耐圧力性を持っていることから、国産飛行機のYS-11は総ジュラルミン製の機体でした。
|最後に・・・
アルミニウムは日常生活の中でもよく目にする素材でありますが、その歴史はまだ浅いです。
しかしながら、素材の汎用性から考えると、今後の可能性はとても秘めている素材といえます。
では、アルミニウムにはどの様な種類があるのか気になりますね。
どれも一緒の素材でありながら、何が違うのかをご紹介したいと思います。
次回の更新もお楽しみにお待ちください。
Hajime Sakayoshi