マーケティング「セグメンテーション」
- 2012.12.12
|環境分析
事業の動向に影響を与える様々な要因を「環境」と称します。
高度経済成長期には、モノ不足からもたされる「作れば売れる」時代が続きました。
そして、国際的にも日本の製造業の高い技術力が評価され「良いモノを作れば売れる」時代に遷りました。
しかしながら、現代では技術力だけに頼ったビジネスモデルでは、既に限界を迎えていることは明らかです。
現代の環境を、1990年頃から使われた軍事用語を流用してVUCA(ブーカ)環境と表現される場合があります。
VUCA環境とは、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字からの造語です。
それ故に、マーケティング戦略を立案する上で最初に行う環境分析は重要です。
環境分析では、内的環境である自社の強みや弱みを把握することは当然ながら、外的環境である市場や競合先などの状況を把握する必要があります。
また、現状の分析だけではなく、将来的な内部環境と外部環境の分析も必要となります。
|セグメンテーションの重要性
「マーケティング」とは、「顧客を理解し、製品とサービスを顧客に合わせ、おのずから売れるようにすることである。」、「ニーズに応えて利益を上げること」、「自然に売れる仕組みをつくること」などと表されています。
「作れば売れる時代」では、大量生産、大量販売を前提に、マスメディアを活用して画一化された広告を大量投入する「マスマーケティング」も有効な手法でした。
しかし、「マスマーケティング」は資本力があったり、その市場においてトップシェアなどのリーダー的な存在の企業でなければ容易に取り組むことの出来ない手法です。
さらに、現代のVUCA環境における細分化した顧客層や多様化したニーズには、「マスマーケティング」だけでは対応仕切れなくなりました。
そこで重要となるのが環境分析であり、その後に行う「セグメンテーション」です。
「セグメンテーション(segmentation)」とは、環境分析で得た情報から、曖昧だった市場や顧客層のニーズから読み解き分類することで、自社がターゲットとすべき市場や顧客層を決定することです。
ある意味、同じ市場、同じ顧客層であっても、条件を変えることで分類が変わる仲間探しゲームのようなものです。
例えば、右上の一覧で考えた場合、野菜、くだもの、動物、空を飛べる、水の中で動ける、色など様々な条件によって、その分類は変わるはずです。
つまり、この条件がニーズあるいは、ニーズに結びつくものに該当するものとなります。
しかし、過剰なセグメンテーションは、複雑さが増してしまいターゲティングに向けた解釈が難しくなってしまいます。
それ故に、適正なセグメンテーションは、4Rであるといわれています。
1. Rank(優先順位)
自社の経営戦略から判断した重要度によってセグメントした市場や顧客層をランク付けする。
2. Realistic(有効規模)
セグメントした市場や顧客層で、自社にとって確保しなければならない規模の売上や利益が確保できる可能性を持っている。
3. Response(測定可能性)
セグメントした市場や顧客層から規模、購買力、特性などが測定、分析でき、購入後の反応も測定できる。
4. Reach(到達可能性)
セグメントした市場や顧客層に対して、製品やサービスの持つ価値を効果的に提供することができる。
常に4Rを意識して検証しながら、適正レベルのセグメンテーションを行わなければなりません。
|セグメンテーションの分類例
セグメンテーションを行う上で様々な分類例があります。
デモグラフィック変数(人口動態変数)
デモグラフィック変数はセグメンテーションにおいて、もっともよく使われている変数です。
これは、測定が数値化しやすく容易であることと、日常的な顧客ニーズのほとんどが密接に結びつくからです。
具体的には、年齢、性別、職業、所得、学歴、家族構成などの要素で分類されます。
しかし、ニーズの多様化から、従来の測定では満足できず、より細分化した変数が求められているのも現状です。
サイコグラフィック変数(心理的変数)
ニーズの多様化により、重要視されてきた変数です。
しかし、価値観、趣向、ライフスタイル、心理的特徴といった、感性の分野に強く結びつく要素であるため数値化するのが容易ではありません。
従来は、アナログ的なアンケート活動がバックデータの根源でした。
しかし、現代では、ITの発展により、企業が導入するマーケティングオートメーション(MA)だけではなく、FacebookやTwitterといったSNSにおける広告出稿では、セキュリティーを担保した上で、登録しているプロフィール情報や趣味嗜好、特定のキーワードを活用しているユーザーのみにターゲットを絞るといったことも可能となっています。
行動変数
ここでの行動とは、顧客が製品やサービスを購入することになります。
つまり、行動変数とは、購入した際の状況(季節・曜日・時間など)、経路、頻度などを分類した変数です。
やはり、この変数の変化も大きくなっています。
特に最近では、実店舗での購入とインターネットでの購入など購入経路の変化が目立っています。
しかし、この測定も、ITの発展により割り出し易く発展しています。
|段取り八分
マーケティング戦略に限りませんが、仕事の成果を高めるためには事前に行う環境分析やセグメンテーションは重要となります。
例えば、セグメンテーションを適正に行うことが出来れば、どの市場や顧客層をターゲットとして、マーケティング戦略を行うべきかが適正に出来ることになります。
逆に、これらの事前の取り組みである環境分析やセグメンテーションを疎かにしてしまうと、結果的にマーケティングの成功に結び付けるのが困難になります。
正にマーケティングの成果を高めるには、これらの段取りで八分方が決まるともいえるかもしれません。
我妻 武彦(Takehiko Wagatsuma) 代表取締役社長