マーケティング「パーソナライズ」
- 2012.12.17
|マーケティングとは
「マーケティング」ですが、未だに日本では、複雑に考えられており、市場調査のことだとか、営業だけのことだとか誤って捉えられている方々が少なくありません。
事実、JMA(財団法人日本マーケティング協会)では、次の様に定義しています。
「マーケティングとは、企業および他の組織がグローバルな視野に立ち、顧客との相互理解を得ながら、公正な競争を通じて行う市場創造のための総合的活動である。(1990年)」
実に分かり難い表現であると思います。
対して、第一人者たちの言葉はシンプルです。
先出のP.F.ドラッカー氏は、「マーケティングが目指すものは、顧客を理解し、製品とサービスを顧客に合わせ、おのずから売れるようにすることである。」と示しています。
また、フィリップ・コトラー氏は、その著書である「コトラーのマーケティング・マネジメント ミレニアム版(2001年)」の中で、実にシンプルに「ニーズに応えて利益を上げること」と定義しています。
日本の代表としては、理央 周 氏が、その著書である「なぜか売れるの公式(2014年)」の中で、「自然に売れる仕組みをつくること」と定義されています。
そのために、闇雲に誰にでも売り込むのではなく、市場を分析して、狙うべき市場や顧客層の設定を行い、自社や製品の立ち位置を明確化したSTPに基づいた提案が不可欠となってきます。
|アプローチ手法
マーケティングのアプローチ手法には、大きく分けて、マスアプローチとパーソナルアプローチがあります。
従来のマスアプローチとは、テレビ、新聞、ラジオ、雑誌などの広告に代表されるもので、不特定多数に一方的に情報を発信するものでした。
確かに、BtoCであれば、テレビコマーシャルだけで売上が上がる時代もありました。
しかし、BtoBであると、一方的に発信するマスアプローチだけで成約に結び付けるのは限界がありました。
故に、パーソナルアプローチは欠かせませんでした。
パーソナルアプローチとは、パーソナライズとも呼ばれ、営業パーソンが顧客や見込み客と個別に接して、そのニーズにあった提案をすることです。
パーソナライズの機能を持たないマスアプローチは、あくまでもパーソナルアプローチを支援する立場であったのです。
しかし、そんなマスアプローチもマーケティングの発展と共に進化しています。
現代は、インターネットやパソコン、スマートフォンが普及し始め、顧客の行動範囲が広がりました。
さらにEC(Electronic Commerce:電子商取引)サイトの普及により購買の選択肢は増え、一方的だったマスアプローチが顧客自ら情報を得て製品比較をすることが可能となっています。
更にパーソナルアプローチの特権であったパーソナライズ機能を有したマスマーケティングも現れだしたのです。
これは、マスアプローチのデジタルトランスフォーメーション(DX)の始まりであり、従来型のマスアプローチの終焉ともいえます。
実際、広告媒体に投じる費用比較では、テレビは一定量を確保できているものの、新聞やラジオを著しく低下し、インターネットがテレビを抜く勢いで伸びています。
|パーソナライズ
そもそもパーソナルアプローチが、マスアプローチよりも、コンバージョン率(制約率)が高いとされてきたのは、パーソナライズ機能を有していたからです。
翻せば、従来型のマスアプローチには、その機能がありませんでした。
しかし、現在のマスアプローチの主力はインターネットになりつつあります。
従来型のマスアプローチのように不特定多数に一方的に情報を発信するものではなく、AI(Artificial Intelligence:人口知能)などのデジタル技術の発展により、個々人の興味や行動履歴に合わせて発信する情報を最適化する(変化させる)ことが可能となりつつあります。
実際、インターネットを検索していると、過去のアクセスデータなどから、意図した訳ではなく、自分の趣向にあった広告が表示される経験を多くの方々が経験しているはずです。これはクロスセルやアップセルと呼ばれるパーソナライズ機能です。
これによって、従来の様にマスアプローチをパーソナルアプローチの支援機能だけと捉えるのではなく、より顧客にとって価値のある情報の提供手法として発展させることが可能なはずです。
従来のドブ板営業の様に、足で稼ぐ営業スタイルには、①経済的制約、②時間的制約、③精神的制約があるとされています。
①経済的制約:活動そのものに人件費、旅費交通費、交際費などの経費がかかります。
②時間的制約:面談時間は当然ながら、移動時間など時間が拘束されます。
③精神的制約:必ずしも受け入れていただく顧客とは限りませんので、精神的な負担が発生します。
御用聞きとも呼ばれるような訪問件数を重ねるよりも、パーソナライズにより、事前に顧客のニーズを探り、それに応じた提案を用意した上でアポイントを取得して訪問する方が、互いに生産性の高い価値を共有することが可能となります。
ベンカンにとっても、マスアプローチによるパーソナライズ機能の向上は、推進して行きたいと考えております。
しかしながら、今後もまだまだ、パーソナライズは、パーソナルアプローチに委ねるところは大きいかと思います。
また、必要以上に、パーソナライズをマスアプローチに委ねすぎるのも危険ではないかと感じています。
要は、パーソナライズのどこをマスアプローチに委ね、どこをパーソナルアプローチに委ねるかを明確にして取り組むことが大切だと思います。
ただ言えるのが、マスアプローチによるパーソナライズ機能の発展は、まだまだ、途上状態であると考えます。
決して、その機能を決めつけるのではなく、外部環境と内部環境を常にリセットしながら、最善活用して行きたいと思います。
我妻 武彦(Takehiko Wagatsuma) 代表取締役社長