オレ流「落合博満」さん
- 2012.12.26
|オレ流
元プロ野球選手の落合 博満さんの講演会を聴く機会に恵まれました。
プロ野球において、様々な名選手がいらっしゃいますが、この方ほど、自分の流儀を大切にされた方はいらっしゃらないのかと思います。
まず、相当の素質を持ちながら、高校は、甲子園常連校ではなく無名の学校に進学し、入部と退部を繰り返します。
その後、進学した大学も理不尽な上下関係などに嫌気が差して半年で退部したといいます。
それでも、その後、恩師の勧めもあって社会人野球チームに所属して頭角を現し、実績を残したことで、25歳の時にドラフト指名を受けプロ野球選手となられております。
1979年から1998年にかけて何チームかを移籍しながら、史上4人目の三冠王を達成すると共に、日本プロ野球史上唯一となる3度の三冠王も達成されています。
また、2004年から2011年までは、中日ドラゴンズの監督として指揮を執り、全ての年でAクラス入りを果たし、4度のリーグ優勝、1度の日本一を達成しました。
そして、2013年のシーズンオフから2017年1月までは、中日ドラゴンズのゼネラルマネージャーも務められております。
そんなオレ流を貫いていると当然、様々な声も耳に入ったのだそうです。
「馬鹿にされるということは、あるい意味、相手がこちら意識をしている証拠。寧ろ、存在を消された方がキツイ。怒るのではなく、自分の感情をコントロール出来たら対処方法も見えてくる。」
これも、正にオレ流なのかもしれません。
しかし、このオレ流が、実は、ビジネスの世界にも十分に通じるマネジメント論であるとも思えたためにご紹介させていただきます。
|責任と権限
落合さんは、監督時代は、責任と権限というものを明確にしたといいます。
監督になって、直ぐに、オーナーとの会食を断った際にも、批判を浴びたのだそうです。
しかし、監督にとっての責任は、チームを目標である「優勝」させることであると考えていた落合さんはブレません。
選手が練習しているならば、監督である以上、選手と共に練習に残ることが責任だと主張したのだそうです。
また、選手育成で重要となるのがコーチの存在です。
にも関わらず、コーチに任せるべき範疇に首を突っ込む監督がいるから選手が育たないともおっしゃってました。
故に落合さんは、コーチに対して、約束事を決めて、それ以外の実際の権限はすべてコーチに委譲したといいます。
委譲されることによって、コーチ自身にも責任意識が芽生えるのだそうです。
反面、約束を破った際には、問答無用で解雇したとも断言されていました。
極論なのでしょうが、プロともなると各チームの選手の戦力は、大差はないのだそうです。
だからこそ、監督は、信頼して任せたコーチが育てた選手の実力を評価して試合に起用し、結果を出すのが責任なのだそうです。
|選手育成
一般企業にとっての新入社員は、仕事の素人ですので、一から細かく教えてあげなければなりません。
対して、プロ野球の新人は、野球の素人ではありません。
そこに新人だからと無理に技術を押し付けようものなら、最悪、角を矯めて牛を殺す。
選手の可能性を潰し、将来を奪ってしまうかもしれません。
つまり、特に選手の育成には、そもそも、必ずなんてことはない。
何か一つを押し付けて、「なんで、こんな簡単なことが出来ないんだ?」と否定するのではなく、方法論をいくつか与えてあげて、あとは自分で選択させることが大切。
正面からだけではなく、回り道、そして、逃げ道までを作ってあげ、考えさせることが大切。
指導する側も伊達に歳をとっている訳ではないので経験が豊富なのは当然のこと。
しかし、今の自分の目線でアドバイスするのではなく、自分がまだ未熟だった選手の頃の目線でアドバイスをすることがコミュニケーションを良好にするコツともなる。
そもそも相手が話を聞いていないならば、話をしても意味がない。
その様な場合に、人に話を聞かせる方法がある。
それは話をしたあとに、話の内容を復唱させること。
もし、復唱できないならば、もう一度話し、また、復唱を求める。
いろんな考えがあるから、チームの強さになる。
この考えから地道なコミュニケーションの繰り返しが大切なのだとおっしゃってました。
|心技体
諸説ありますが、語源は、明治時代の 柔術の教えの一つとされている「心技体」という言葉があります。
しかし、語源では、心技体とは順番が違っていて、一、身体の発育 二、勝負術の鍛錬 三、精神の修養 とされています。
落合さんの考えも正に、この順番であって、まずは、体、健康あっての技であり、精神なのだそうです。
実際、現役時代、スランプに陥ると、寝る間も惜しんで練習をした名選手はたくさんいたそうです。
「オレは、食事をして寝た。疲れていては身体が動かない。眠くては頭が回らない。
その上で、これで良いのか、やり残したことはないのかを自問自答する。
それで良くないならば、自ずと行動するはず。
そして、自分の不安を払拭して行く。心である自分自身の考えが一番弱い。」
やはり、最後まで、オレ流でした。
我妻 武彦(Takehiko Wagatsuma) 代表取締役社長